第79章

和也は彼女を見つめた。その両目は血走っている。

「今まで君を守れなかった分、今回は俺に盾とならせてくれ」

葵は息を呑んだ。

春は彼女に口を挟む隙を与えず、背負ったまま前へ突っ走った。こんな状況で感傷に浸るなど、死を招くようなものだと分かっているからだ。

点検用のマンホールを春が肩で押し開ける。外は南山別院の裏山を流れる排水溝だった。雨粒が顔に打ちつけ、骨の髄まで凍りつくほど冷たい。

春が葵を引き上げ、和也に手を伸ばそうと振り返った瞬間、支管の奥から連続して銃声が轟いた。

一発、二発、三発。

そして、短い静寂が落ちる。

葵はずぶ濡れの地面に手をつき、爪が泥に食い込むほど力を込め...

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